1.5 本書の構成

本書は, DCLがすでにインストールされている環境で, このライブラリを使い 始めようとする人を念頭に置いて書かれています. サンプルプログラムはすべ てFORTRANで書かれており, その知識を前提としています.

本書ではグラフィクス部分だけを解説しています. 第2章では, DCLグラフィク スの雰囲気を概観し, 第3〜5章では, GRPH1の基本的な部分について解説 します. また,第6〜10章では, 上位ルーチン群であるGRPH2の各パッケー ジを解説します. さらに, 第11〜13章では欠損値処理やカラーグラフィク スなどの応用的な部分を紹介します.

グラフィクス以外の部分については最後の章で簡単に触れます. MATH部分はこ れからどんどん充実させていきたいところであり, やがて, 「らくらくMATH」 が出るくらいに取り組んでいきたいものです.

 

 
計算機のなまり 1

FORTRANの方言

計算機言語には各国の標準機関(日本ではJIS) 及び国際標準機関 (ISO) により定められた規格があります.FORTRAN も例外ではなく,いわゆる FORTRAN77 の規格があります.

FORTRAN コンパイラは通常,「標準語」としての FORTRAN77 規格 + α の機能を持っています.この + α が拡張機能と呼ばれるものです.このような FORTRAN77 上位互換コンパイラは,コンパイラとしての機能は高いのですが,逆に,+αの機能を使ったプログラムは,そのコンパイラでないとコンパイルできないことになります.そういうわけで,ここでは +αの部分を「方言」と呼びます.  

例えば,INCLUDE 文や4倍精度の実数,行末コメントなどは,良く知られた「方言」です.このような FORTRANの「方言」は特定の計算機を使いこなすには便利な場合も多いのですが,そのプログラムが他の計算機で動く保証はどこにもありません.プログラムの可搬性(他の計算機への移植のしやすさ)を高めるには,そのプログラムを「標準語」化する必要があります.

しかし,どんなコンパイラでも大なり小なり「方言」を持っており,「方言」を含まないプログラムを書くことは容易なことではありません.そもそも,ある1つの計算機しか使ったことがなければ,何が「標準語」で何が「方言」かを見分けることすら困難です.  

DCL は,極力この「方言」を避けるように努めています.どうしても「方言」を使わなければならないところでも直接「方言」は使わないで,「電脳標準語」を定義して各プログラムの中ではこの「電脳標準語」を使うようにしています.この「標準語」化の努力が DCL の最大の特徴であり,DCL の可搬性を生み出しているのです.