1.3 DCLの特徴と将来

地球流体力学という分野における, 特に大学での研究教育活動の現状を反映し て, DCLは次のような特徴を持っています.

1.
「標準言語」としてライブラリの体系がわかりやすく, 柔軟である.
2.
プログラムが適当に構造化され, 可読性が高い.
3.
複数の計算機上で同じプログラムが実行できる.
4.
標準的に FORTRAN 言語を使う.
5.
高品質な2次元の図形出力がメソッド(元サブルーチン)コールの形でできる.
6.
欠損値の存在するデータ(観測値)を, そのまま扱える.
このうち1, 2 の特徴は大学で使うという事情を反映したものであり, 3, 4 は 現在の我々を取り巻く計算機環境に関係しています. また, 5, 6 は, 常に計 算機の能力いっぱいの仕事が存在するという地球流体力学の特徴に関係するも のです.

DCLはIBM型メインフレームと共に育った世代の手によるものです. したがって, メインフレーム+FORTRAN という組み合せにおいては, 洗練された完成度の 高いライブラリであると自負しています. 現在, DCLはワークステーション +FORTRANという組み合せを標準的な計算機利用方法として想定していますが, これが将来にわたって標準的な形態であるとは思えません. FORTRANの新しい 規格であるFORTRAN90がFORTRAN77に取って代るほど普及するかどうかはわかり ません. また, ワークステーション+Cという組み合せによる計算機利用スタ イルが急速に普及しつつある現在, 世の中の計算機事情に応じて, ライブラリ 自身も変化していかなければならないでしょう.

もっとも, 完成度の高いライブラリを書くためには, その言語の特質を知りつ くしていなければならないので, 急にDCLが変化していくとは思えませんが, 時代の流れは注視していく必要があると考えています. 我々はあくまでも計算 機を使う側の人間であり, 計算機技術に関して流れを変えることはできないの でしょうから.